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卒業生の事例紹介#8 共通認識と構造理解が導く「組織にとって最適な未来」 ~有意義なセッションに欠かせないセッティングとは

2024年8月15日



SOUNDコーチ養成講座卒業生である、笠松拓也さんにSOUNDカードの活用事例についてお伺いしました。


■インタビュイー:笠松拓也さん

株式会社Yurusy 代表取締役。「人と組織の可能性をどこまでも自由に解き放つ」を理念に掲げ、事業を展開。東証プライム上場企業から、創業間もないスタートアップまで50社以上のクライアントをサポートし、自律・協働する組織づくりのための伴走支援を行う。


 
【前提や目的を明確にしたうえでセッションに臨む】

―どのようなきっかけで、SOUNDカードやSOUNDメソッドをお知りになりましたか?


2016年の独立当初は、採用を中心とした人事コンサルタントとして活動していました。その領域だけでなく組織開発についての理論を学ぶうちに、中土井さんが紹介されているU理論に出合いました。人や組織はUの字を描くように変容するのだということを、その実践や勘所を完璧に理解していたわけではないですが、そうした枠組みでとらえることが大切だと考えていました。それから、中土井さんが「SOUNDコーチ養成講座初級編」を開いていることを知って、カードを使った組織開発の手法を学べるのは面白そうだと感じたのが、講座に参加するきっかけでした。



―SOUNDカードを知る前に、仕事上で課題に感じていたことは何でしたか?


私もコンサルタントとして、研修やワークショップを企画・開催していたのですが、そうした場は、どうしても日常の業務から切り離された非日常の場となります。そうではなく、職場内で社員それぞれが関わるなかで、社員が自主的にファシリテーターとしての役割を担ったり、何かツールを媒介にして社員の関係を深めたりできるようなアプローチ方法はないだろうかと、常に考えていました。特にゲーム性のあるものですよね。ボードゲームでの課題の掘り下げや、レゴシリアスプレイ®など、元々それらに関心を持っていた中で、SOUNDカードがたまたまヒットしたという感じでしょうか。


―実際にSOUNDカードを使ってみて、いかがでしたか?


まず講座を受けたときは、シンプルに「面白い」と感じました。問いを生成していくプロセスと、そこに向き合っていくプロセスを、カードを使って進行されるのが非常に滑らかで、楽しく参加できました。ただ、講座に参加する人は、もともと組織内で話し合いの場を設けたいと考えている方たちばかりで、そうした前提があるから機能しているのではないか、という懸念もありました。例えば、このままクライアントに持ち込んでも、興味を持ってもらえるのか、話し合いができるのか、という点ですよね。


でも、実際にやってみると、丁寧に導入をすることで初めての方でも興味を持って、ゲーム感覚で楽しんでもらえたので、あまり心配はいりませんでした。「普段、こうした話ができなかったよね」「今まで出てこなかった気づきがあったよね」などと感じて頂けたようで、どんな人でも土俵に乗ってしまえば、ワークしていくものなんだと感じました。


―土俵に乗ってもらうというのは一つのポイントだと思いますが、参加者に乗ってもらうために必要なことはありますか?


そもそもこうした話し合いやワークショップなどで、大切なのは、前提や認識の共有ではないでしょうか。当たり前のことかもしれませんが、組織が今抱えている課題や、今なぜこの関係者で話さなければならないのかといった前提が一番の肝であり、そうした共通認識があってこそSOUNDカードなどのツールが生きるのだと思います。最初にしっかり意図や目的を参加者に伝えることが大切でしょう。


ですから、ある程度の課題感や、今解くべき問いがメンバーの中で収斂している場合は、カードを使わないことの方が多くなりますね。みんなで、一つの課題に向き合っていこうとしているときとか、本当に価値のある問いを探索しながら共通認識を積み上げていくようなときこそ、こうしたカードが有効だと思います。一気に大人数を巻き込んでいけますし、組織の問題意識や気持ちを共有していきやすいのではないでしょうか。それほど多く使っているわけではないので、これはまだ仮説でしかありませんが、今後、試して検証してみようと思っています。




【構造理解を深めることを意識】

―実際にSOUNDカードを使うときは、どのように使っていますか?主に実践されているステップなどあれば、教えてください。


基本的には、マニュアル通りにStatusから順番にやっています。これまでにカードを使ったのは、経営チームの組成とプロジェクトチームのキックオフのタイミングで、StatusからDriveまで5つのステップを順番にフルでやってみました。プロジェクトのキックオフ時には、既にチームが目指すべき大きなOutcomeは示されていても、実際には個々が持つ文脈や、メンバー同士の関係性は織り込まれていないと思うんです。そこで、メンバーでゴールに向き合い、Outcomeを生成し直すというのがキックオフという場になる。そういう作業をするにあたって、SOUNDカードを使ってみると、チームがスムーズに立ち上がっていくというのが、これまでやったみた感触です。


カードの使い方にはいろいろな方法があるのでしょうが、ファシリテーターとして一連のステップの中で最も重視しているのは、Understandの構造理解の部分です。ここを一番厚めにして、何度も巻き直しながら理解を深めていくのが大切だと思っています。最後のDriveのステップまでやり切って具体的なアクションを設定することも大切ですが、Driveが目的ではなくて、むしろUnderstandのステップで、みんなで構造理解を深めていくことに重心を置くべきだろうなと意識しているのが現状です。


―クライアントの課題解決にカードを使っているとのことですが、相手からはどのような反応がありますか?


コミュケーションツールに対する関心の高いクライアントだったのですが、「シンプルな構成だけど、普段話せないことが話せた」「一度だけでなく、定点観測として現時点のチームがどのような状態なのかを、その都度確認するのに使える」といった声があったのが印象的でした。課題を設定するうえでも、組織の中の関係が今どうなっているのかをあぶり出すのに活用できるという意味で、サーベイに近い使い方もできるのではないか考えています。


―笠松さんから見たSOUNDカードの特徴について教えてください。


さまざまな特徴があると思うのですが、特に一つ挙げるとすれば、セッションの場を用意して、その場に集まる意味や、なぜこのメンバーで話すのかという目的さえセットできたら、後はカードが今の組織にとって最適な未来に必ず導いてくれるというところが、SOUNDカードの本質的な価値だと思います。たとえファシリテーターが介在してなかったとしても、その場に参加している人たちにとって、今最適な未来が必ず現れてくるツールとなっているという点が非常に特徴的だと思います。



―私たちのSOUNDコーチ養成講座の中でお伝えしている「波乗り状態」、つまり最適な波に乗ってる状態が立ち現れてくるということでしょうか?


まさにおっしゃる通りですね。背景理論は講座の中で説明されていますが、その効果をまさに体感できる。だからこそ、テーマが明確になった状態でカードを使うのはもったいないような気がします。「SOUNDカードを使うことで、こんな結果が得られるだろう」とか、「困難な課題に向き合うために、セッションをやるんだ」といった先入観や期待のようなものに囚われるのは一旦やめて、「なぜ、自分たちが話し合うのか」という最低限のセッティングがある状態で集まる。そうした状況こそ、カードのポテンシャルが最も発揮できるのではないでしょうか。あれだけの多彩な問いが用意され、偶発性もある設計になっているので、その価値を最大化できるシチュエーションで臨みたいと考えています。


【話し合いから偶発的に生まれるものを大切にしたい】

―「その場に参加している人たちにとって、今最適な未来が必ず現れてくる」というお話がありましたが、笠松さんにとって大事なキーワードが含まれているように感じました。


ファシリテーションの役目を担うとき、計画性と偶発性の両方を大切にしながらプロセスをリードしていくことが重要だと思っています。私は普段、組織におけるさまざまな課題に向き合っていますが、そうした課題はしだいに複雑性が増していくもので、一朝一夕で解決できるものではありません。課題に対し、何か明確な要件定義をして、あとは着々と作業を遂行していけば解決するという技術的な課題では決してない。刻々と状況が変わり、それに関わる人次第で課題の質も変容し続けるような、まるで生命体のようなものです。


そうした課題に向き合うとき、人の理性で把握できる計画性を放棄するわけではありませんが、それよりも、その都度偶発的に生成されていくものをどれだけキャッチアップしていくかが大切だと思います。そして、その情報を汲み取りながら、それが意味するところを理解し、課題をみんなで共有し、より良い方向に軌道修正していく。この巻き直していくプロセスをいかに丁寧に行っていけるかが、複雑性の高い組織課題を解決するうえで重要になります。そういう観点で、偶発的にその場から生成されるものが、組織にとって最適な未来につながっていくのだと思っています。



―人と人とが関わる中で生まれてくるものや、人と人とが関わることでしか生み出せないことを引き出していくことに、ファシリテーターとして向き合っていらっしゃるように感じます。


人には一人一人、仕事や暮らしを含めた日々の営みがあって、それがより良くなっていっている、自分としてうまく回っているという実感があれば、その人は希望を持って生活できるし、日々を生き抜くエネルギーになると思います。大きなプロジェクトに参加したり、組織や会社に向き合っていたりすると、どうしても事業とか組織とかチームとか社会とか、大きな主語で物事を考えがちになってしまう。もちろん、目の前にある課題を解決するのは大切ですが、それを解決するのは一人一人の力であって、その人たちにとって「日々の営み自体がより良くなっているなあ」とか「自分自身にとってもいい感じになっているなあ」といった感情を織り込んでいかないと、人は動けなくなってしまいますし、課題も解決できないと思うんです。


だからこそ、あらゆる働くプロセスにおいて、一人一人の日々の営みがより良くなるのかどうか、という眼差しを大事にしたい。その点、SOUNDカードには、個人としての解であったり、気持ちであったり、衝動といったものがきちんと発露される仕掛けが施されています。そういった個人の内側にあるものが発露されることで、その人の営みも良くなると私は思っているので、私自身が大切にしたいことと、SOUNDカードは非常に親和性が高いという印象があります。


―今後、SOUNDカードやSOUNDメソッドを使っていくにあたって、「このような使い方があるのではないか」などと考えていることはありますか?


100人くらいの大人数、例えばワンテーブル5人で20テーブルぐらいといった大規模なセッションを一度やってみたいと思っています。それで各チームのセッションをまとめたときに、会社の全貌がわかるようになれば、興味深いですよね。全社的な組織開発という観点で、一気に会社全体を巻き込んだ場づくりができたら、SOUNDカードの力やインパクトを感じられるような気がします。


SOUNDカードは、ファシリテーターがいなくても場が作られていくということに基本的な価値があるので、大きな集団に対しても課題解決のツールとして使えたら、そこに大きなロマンがあるような気がします。ぜひチャンスがあればやってみたいと思います。


―最後に、これからSOUNDカードに触れる人や、SOUNDカードを知っているけれど活用方法が思い浮かばないという人に対して、何かアドバイスがあればお願いします。


SOUNDカードの価値を正しく伝えようとか、背景にある理論をしっかり伝えようといったことをあまり考えない方が良いと思います。そうしたことは、実は実際のセッションではあまり重要ではなくて、伝えるべきは体験者として自分がどのような価値を感じているのか、自分の主観的な体験談や評価している点などだと思います。さらに重要なのは、なぜ、自分が参加者と話をしたいのか、今何を話したいのかということを分かち合うということです。SOUNDカードを通じて自分が体験した良さを信じて、相手に「一緒にやってみよう」と呼び掛ける。そして、それに乗ってもらえたら、自分と同じ良さではないかもしれないけれど、相手も自分なりの良さを感じてくれるはずです。そこは間違いないので、SOUNDカードの力を信頼し、一歩踏み出して働きかけていただきたいと思います。


―貴重なお話をありがとうございました!

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