面白法人カヤック様 SOUNDカード™体験セッション&インタビュー
SOUNDカード™だからこそつくれる、「新しい話し合いのデザイン」とは 。
~面白法人カヤック様と解き明かす、SOUNDカード™の本質と可能性(4)
INDEX
1.「少しの準備でかなりのレベルまで会議を持っていける」って本当に?
2. SOUNDカード™はファシリテーターの「金棒」になる
3 .話し合いの3 つのポイントと、コントロールの秘訣とは
4 .会議内の見えない権力を解体するには
5 .暗黙知依存が生む「行き詰まり」を解消する方法とは
6 .おわりに
5.暗黙知依存が生む「行き詰まり」を解消する方法とは
柴田さん: 「権力」ということについてお聞きしてみたいのですが、例えば社長など組織のトップの人は、関係性の中で無意識のうちに自分の権力が強まっているということは、見えなくなってしまっているものなんでしょうか。
― その場合もありますし、権力が強まってしまっている状況が見えていてもどうしようもなくなっている状況も多いと思います。
柴田さん: なるほど。権力が誰かに集中してしまうことの因果関係をすべて理解して打ち手を打つというのは難しすぎるなと思ったのですが、勝手に出来上がってしまう権力構造をフラットに戻し続ける、というのは出来そうだなと思ったのです。
経営層に集中してしまうそういった様々な「権力」の勾配を直そうと意図的に活動していますが、私自身が役職、立場として権力を持つ側にどんどんなってしまっているので、丹治さんなどの新しいメンバーにやってもらう必要があると感じています。
― ポイントは、課題の複雑さと問題の緊急性が高まれば高まるほど、その対応が暗黙知に依存するという事です。
暗黙知を形式知化する暇がないので、形式知から学ばざるを得ない発達段階ステージの人が対応に追いつかなくなる。暗黙知依存によってデッドロックが起こるのは、時代の流れとしても避けがたいと思うんです。
柴田さん :なるほど、それはもはや避けがたい課題なんですね。
―そうすると、暗黙知を有するリーダーに仕事が集中していきます。私はこれを「リーダーシップのジレンマ」だと言っています。仕事ができるリーダーに、仕事が集まるほどそれが足かせになっていく。そのことで格差がまた生まれる。
それは、権力をはじめとしたリーダーへの様々な集中をどう分散させるかがポイントだと思っています。分散のレバレッジポイントとしてSOUNDカード™を作ったということもあります。
柴田さん: その意図において、SOUNDカード™の有効な使いかたはあるのでしょうか。
― 方法というよりは、日々の会話の中でしか生まれないと思っています。「リーダーしか知らない」「リーダーにしり込みしちゃう」ことは反発となって対立を生みます。
初めにSOUNDカード™セッションで1on1をしたような「言えた感」をつくり出せる、という話がありましたが、ちょっとずつ「言えた感」があるとガス抜きされますよね。
そして、自分の意見は汲み取られている、という実感があると皆発言しやすくなります。
あるいは、リーダーの話を聴いて、何を思い、何を考えているのかがインプットされるとメンバー側の洞察が深まって、自律的な動きも生まれるようになる。
そうすると、リーダーがそこまで狂った意思決定をしなくても済むんです。
こうした、適切な日々の権力の解体作業ともいえる取り組みが、リーダーとの格差を解消するレバレッジポイントだと思っています。
丹治さん:カヤックは典型的な暗黙知企業で、リーダーの知見を共有する方法を試行錯誤しています。
身近な例として、柴田は管理本部長としてだけでなく月の半分は北海道の下川町に滞在していて、他の役割もあって…という状況なのですが、彼自身、民主的なリーダーシップスタイルなので専制的にはなりませんが、期待される人物あるからこそ権力を分散していこうと試みても周囲から「決めてほしい」と言われるループが生じてしまいます。
また、暗黙知はどうしても感覚的なものになってしまい、浸透しづらいという問題があると思います。そして、その共有する時間はない。
柴田さん: 共有してもなかなか伝わらないですね。私は、その暗黙知をハイコンテキストのところで理解しているから、他のメンバーはどうしても理解するまでに時間がかかる。
コンセプトワーク的に紐解いていくのは好きで、様々なところでやってはいますが、今回の話を聞いて、改めてSOUNDメソッド®への理解を進めましたし、SOUNDカード™は暗黙知を伝えていくという点においても使いやすいツールだと感じました。
― 課題の難易度が高まるほど、リーダーたちは今までにないことにチャレンジしなければならなくなり、新しい暗黙知を作り出さなければならなくなります。それを形式知化する暇はより無くなっていきますから、リーダーとメンバーとの差はより増えていきますね。
最近は、リーダーの燃え尽き現象が増えているように思います。心身の健康を損ねてしまう方が多いのです。または、SNSなどでは強烈に批判されるコメントが殺到するとか、リーダーポジションにある人が有名税を払った分のリターンが少ない、なんて話もありますが、近いようなことは組織内でも構造的に起きやすいですよね。
結果、割に合わない、とリーダーを誰もやりたがらなくなり、ますますリーダーとそのほかの人の差が開いていきます。
その権力構造を解体して、格差の薄いシステムへの変容をサポートできないかと思って作ったのがSOUNDカード™です。
丹治さん: カードの話に戻りますが、切り出しでも使いやすいですね。皆忙しいから1時間半しか取れないときはStatusとOutcomeをまずやろう、とか。または、StatusとNegative Checkを先にやって、方向性が定まってからOutcomeをやろう、とか。 SOUNDメソッド®のどこを切り出すか、というアレンジメントもしやすいですね。
柴田さん: 誰かにいいものを紹介するときに、知らない人に対してどのエピソードを言ったらって「おっ」となるかな?というのを、いくつかのパターンを持つようにしています。インプロもすごい好きなのですが、ずっと説明が思いつかなくて。同じようにSOUNDカード™も思いつかないかも…と思っていたんですが、今日のこの機会を通して「権力関係ができちゃって会議の空気が変な感じになり、”うまくいかないよね”を解決の方向に導くもの」という紹介が、皆になるほどと伝わる気がします。
― ありがとうございます。講座卒業生の方は、SOUNDカード™は「言える化ツール」であると紹介してくださっています。「カードの問いに言わされる」とも。
柴田さん: なるほど。問いのカードは自分で選ぶんだけど、「こういう問いが書いてあったから」とカードのせいにできるのは面白いですね。
丹治さん: ジェネラルなことを1つ挟めることの良さなのでしょうね。そして、そこに設計や、議題の上げ方、ファシリテーションの進め方などの意図を入れられるのがすごくいいですね。
― 改めて、ここまでのお話を通して、今仰った「アジェンダとグルーピングがはまればカードがはまる」ということは、どういう意味で見えていらっしゃいますか?または、何か認識が変わったことはありますか?
柴田さん: 「暗黙知」をどうやってメンバーに転移していくかということは、グルーピングなどの工夫以上に、自分にとって大事なポイントになりそうだ、という発見がまずありました。
丹治さん: 私は、今思えば「暗黙知をどう転移するか」は考えていた気がします。 先日のグループ経営会議の際、例えば実行力はあるけれど思考が手段寄りになってしまう人はコンセプトについて考える、という事がしづらい。そこに、経営者としての暗黙知を有している人とチームを組ませて、暗黙知を移植させる作業として使っていました。
柴田さんについてもそう考えている気がします。柴田さんのこんなところが、メンバーに浸透していくと、アジェンダも進むし、グループワークとしてもいいし、個々人へのスキルやノウハウの展開もあるし…と。
― グルーピングがはまる、というのは、グループにいる人達のケイパビリティがきちんと引き出されて活かされる。そして暗黙知となっていることも引き出され伝播していく、その組み合わせということですね。
柴田さん: SOUNDカード™セッションだと、全員の話が引き出されることを前提にグループを組めるから「この人は喋りすぎちゃうかも」というのを気にしなくてもよいですね。
― 受信・発信のバランスが取れるという事ですね。
丹治さん: そうですね。普段話しすぎてしまう、発信ばかりの人も、他の人の意見を受信してみたら発信内容も変わるはずなんですよね。
他の意見を受信することで、他の人たちが受け取りやすい発信ができるようになるし、そういう構造が出来上がっていきますね。 なるほど、影響を与える関係が一方通行じゃなくなるということですね。
― まさに、それが「権力の解体」であり、「いつものパターンの解体」ですね。
丹治さん: 「この言葉をそのまま使うと場に影響を与える」という感覚を、全員等しく持っているんでしょうね。
場における関与や権力構造の非対称性がある場合、その影響は権力者側に寄る傾向があるけれど、比較的フラットなプロセスがSOUNDメソッド®でつくれるので、権力者以外のメンバーも影響を与えているという感覚を持ちやすくなり、個人の満足感を高められるんでしょうね。
― そして、先ほどの柴田さんの「自分の暗黙知が引き出されるか?」という感覚も大事ですよね。
柴田さん: そうですね。その時、どうやって入っていくのがいいか。次の機会は、自分は進行だけして場には入らない前提だったんですが、暗黙知の転移が遅れるという観点を踏まえると、どっちがいいんだろうな…。
丹治さん: それ、一緒に組み立てましょう。
― 使い方の応用ができる余地があるなら「答えてほしい問いを周りが選ぶ」のもありだと思います。例えば1on1などで、相手に聞いてみたいカードを3枚選んで、答える側がそのうち1枚を自分で選ぶ…となるだけでも全然ちがいますよね。今回なら、柴田さんに答えてほしいカードをミーティング参加者の方に投票してもらうとか。
柴田さん: なるほど、確かにそれはいいですね。
丹治さん: そういう遊び心のあるテーブルを1卓作ってもおもしろそうですね。
6.おわりに
― ここまで沢山のお話をお伺いすることができました。今回は本当にありがとうございました。最後に、ぜひ感想などをお伺いできますか。
柴田さん: 私は、自分の課題の話と会社のことを切り分けて考えていて、SOUNDカード™の適用対象を自分以外の部分に関してどうするかと考えていたんですが、自分自身が関連する問題を解決するというところにこれをどう適用するか?というポイントに気づけました。
あたりまえと言えばそうなのですが、自分の話だから見えにくいんですよね。なので丹治さんに相談しようと思っています。
丹治さん: 私は解説をお聞きして、自分の感覚は間違っていなかったのだと自信がついたのがうれしかったです。時間さえ確保できればこういうことができるんだ、と改めて思えましたし、グルーピングに関することを通して、チームの観点、アジェンダの観点、個々人の満足度の3つの観点で組み立てられるなと思いました。
― お二人とも、本当にありがとうございました!